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スマートフォンやノートパソコンなどのモバイル機器から電気自動車やハイブリッドカー、蓄電池など、あらゆる機器に使用されているリチウムイオン電池は、現代の我々の生活には欠かすことができないデバイスになりました。
今回は、蓄電池にも多く使用されているリチウムイオン電池について、説明していきます。
リチウムイオン電池の特徴
リチウムイオン電池の特徴として以下の点が挙げられます。
- ・セル電圧が高い
- ・エネルギー密度が高い
- ・急速充放電が可能
- ・サイクル寿命が長い
- ・価格が高い
- ・セル電圧、セル温度の監視
- ・充放電電流の監視
- ・SOC(充電率)の算出
- ・SOH(健全度)の算出
- ・充放電の制御
- ・セルバランス制御
- ・バッテリー故障判定
- ※セル:単電池とも呼ばれる個々の電池のことを指します。複数接続して大きなサイズのバッテリーモジュールとすることで、電力供給量を増やすことが可能です。
- ※バッテリーモジュール:バッテリーモジュールはセルと呼ばれる個々の電池を複数接続することで構成されます。使用用途に合わせ、様々なサイズが存在します。
- ・バッテリーの使用できる電圧範囲を、安全にかつ最大に活用することが可能になります。
- ・バッテリーの電圧、電流、温度を適正な範囲に保ちながら使用することが可能になります。
- ・限度を超えた充電・放電による発熱や発火を未然に防ぐことにつながります。
これからこれらの特徴について具体的に説明していきます。
セル電圧が高い
リチウムイオン電池は、他の種類の電池に比べてセル電圧が高いです。具体的な数値の参考として、以下に4種類の主な電池の
セル電圧の値を載せます。
電池名 | 公称電圧 |
---|---|
リチウムイオン電池 | 3.6V |
鉛蓄電池 | 2.0V |
ニカド電池 | 1.2V |
ニッケル水素電池 | 1.2V |
エネルギー密度が高い
「エネルギー密度」とは、バッテリの単位質量あたりに取り出せるエネルギー量のことを指します。単位はWh/kg(重量エネルギー密度)が使用されます。
例えば、鉛蓄電池の重量エネルギー密度が約30~40Wh/kgであることに対して、リチウムイオン電池は約150~200Wh/kgであるため、鉛蓄電池に対してリチウムイオンバッテリのエネルギー密度は約5倍あるということになります。
異なるエネルギー範囲を示す一般的な電池のエネルギー密度の範囲は以下の通りです。
電池の種類 | エネルギー密度の範囲 |
---|---|
鉛蓄電池 | 30~50 Wh/kg |
ニッケルカドミウム電池 | 45~80 Wh/kg |
ニッケル水素電池 | 60~120 Wh/kg |
リチウムイオン電池 | 50~260 Wh/kg |
この表を見ても分かるように、リチウムイオン電池はエネルギー密度が比較的高いです。ですので、より省スペースな製品を作ることが出来ます。
急速充放電が可能
リチウムイオン電池は、他の電池と比べて内部抵抗が低いという特徴を持つため、大きな電流で充放電をすることが可能です。このような特徴から、リチウムイオン電池は急速充放電することができます。
サイクル寿命が長い
リチウムイオン電池に関わらず、二次電池は充放電を繰り返すことにより、劣化していきます。具体的には、徐々にバッテリー容量が低下していきます。
電池によってこの劣化速度が異なり、例えば、鉛蓄電池では1Cの電流値で充電と放電を繰り返すことにより約500回で電圧が低下し始めます。一方、リチウムイオン電池では、使用環境により多少異なるかもしれませんが、3000回~4000回までは劣化が起こらないと言われています。このことからも、リチウムイオン電池はサイクル寿命が長く、比較的長持ちすると言えるでしょう。
※“C”はバッテリの公称容量を表す記号で、1Cとは連続して1時間放電したときに放電が完了する電流値のことです。
価格が高い
一番大きな問題と言って良いのが、リチウムイオン電池の価格です。2010年のリチウムイオン電池の価格は10万円ほどだったので、その頃と比べれば、時代と共に買い求めやすくなったと言えますが、2020年の時点で1kWhあたり2万円前後であるため、他の二次電池と比較すると高価だと言えます。
電気自動車に使用されるリチウムイオン電池は50kWhほどになるため、バッテリーの価格だけで100万円を超える計算になります。
リチウムイオン電池が搭載された製品の注意点
リチウムイオン電池の寿命
リチウムイオン電池は、約500回の充放電を繰り返すと、寿命に近づくと言われています。このことは、バッテリーのサイクル劣化と言われています。具体的には、長く使用するほど、充電に必要な電力量が減り、使用可能な時間が減るという現象が起こります。リチウムイオン電池は満充電あるいは電池残量0の状態で放置すると劣化が起こるため、注意して取り扱いましょう。リチウムイオン電池が搭載された製品を長期間放置する場合は、バッテリー残量が50%ぐらいの状態を保って保管することで、バッテリーの劣化を遅らせることが出来ます。
リチウムイオン電池の危険性について
リチウムイオン電池は充放電を過度に繰り返すと、高熱になり、発火する恐れもあるため、注意が必要です。リチウムイオン電池を安全に使用するには、周囲温度25℃付近を保つ必要があります。
また、高いところから落としたり、衝撃を加えたりすることによっても発火しやすくなるため、気をつけて取り扱いましょう。
このように、リチウムイオン電池は、過放電・過充電をすることにより、発熱し、発火する恐れがあり、製品の取扱いには十分に気をつけなければなりません。
そして、なるべく発火のような事故を防ぐために、リチウムイオン電池に採用されているのが、バッテリーマネジメントシステム(BMS)です。バッテリーマネジメントシステム(以下BMSと表記)により正しくリチウムイオン電池を制御することが出来れば、安全に電池を使用することが可能です。次に、このBMSについて説明していきます。
バッテリーマネジメントシステム(BMS)とは
リチウムイオン電池には、必ずBMSが搭載されています。このBMSの機能について説明します。
まず、BMSの役割について以下に記載します。
BMS機能の目的は、電池の状態をモニタリングすることにより、リチウムイオン電池が危険な状態にあった場合に、それを検知して、事故を未然に防ぐことです。
具体的な機能としては、バッテリーモジュール内で直列接続されたセルごとの電圧差を解消し、バランスを整えたり、バッテリーモジュールのセル電圧、電流、温度を測定して規定となる値を超えた場合、出力端子を切り離し、過充電・過放電・過電流等から発熱することを防ぎます。他にも、電池残量をモニタリングすることで電力供給を制御します。
BMSの基本機能
BMSの基本的な機能を以下に具体的に説明します。
電圧モニタリング機能
各セルの電圧を測定、監視します。過充電や過放電も検知可能です。(値も設定可能)
温度モニタリング機能
基板に接続したサーミスタによる測定、監視を行います。高温、低温の検知が可能です。(値も設定可能)
電流モニタリング機能
基板に接続した電流センサーによる電流の測定、監視を行います。充電過電流及び放電過電流の検知が可能です。(値も設定可能)
セルバランシング機能
セル間の電圧バランスを調整
BMSにより実現する安全性
BMSにより、リチウムイオン電池を安全に使用することができます。具体的に、以下のような安全性に対するメリットがあります。
まとめ
今回は蓄電池にも採用されているリチウムイオン電池とBMS機能について説明していきました。
今ではリチウムイオン電池にはBMS機能が付属していることがほとんどですが、リチウムイオン電池の危険性も知った上で、より安心できる
BMS機能のついた蓄電池を選びましょう。