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企業におけるBCP対策の必要性
2023.8.7

防災のイメージ

日本では東日本大震災などの地震が多く、最近では地球温暖化による影響からの自然災害の発生頻度が多くなっています。
そういった中で、企業間でも、災害時の緊急事態を想定し、不測の事態が起こっても事業継続を可能にする努力をする必要性が出てきました。

BCP対策とは、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態が起きた場合でも、事業資産の損害を最小限にし、事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、普段取り組むべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを事前に取り決めておく計画のことです。ここでは企業におけるBCP対策の必要性について記述していきたいと思います。

災害時に必要となる初動対策

万が一、業務中に被災した際には、まず従業員の安全確保をし、家族を含めた安否確認や状況把握、データのバックアップなどが必要になってきます。

災害時に企業の中で必要になることを、以下にまとめました。

  • ・従業員の安否の確認
  • ・従業員の家族の安否の確認
  • ・社内の被害状況・社外の被害状況の確認
  • ・緊急処理業務、データのバックアップなど
  • ・取引先と連絡をし、今後の業務についてフォロー

しかしながら、災害発生時に停電が起こってしまうと、これらの全てのことが行えなくなりますので、事業を継続することは難しくなってしまうでしょう。

近年の災害時の被害について

地球温暖化の影響もあり、近年では、日本だけではなく世界中で大型の自然災害が起こっています。
さらに、日本は地震も多く、特に被害の大きかった2011年の東日本大震災では、被災地周辺での停電の範囲も広域となり、その被害は計り知れません。

2018年には北海道で起きた地震ではブラックアウトが起き、初めての北海道全域で停電が起こる事象が発生しました。“ブラックアウト”とは、大手電力会社の管轄する地域のすべてで停電が起こる現象(全域停電)のことを意味します。この北海道の停電では、地震による被害で、停電までの最初の数十分の間に次々と発電所の機能が停止したことがブラックアウトの原因となったと考えられています。ただし、この時も、北海道電力が事前に定めた手順通りに復旧活動を行うことで、2日間で99%の停電を復旧させることができました。

BCP対策が注目されるようになった経緯

BCP対策が近年注目されていますが、BCP対策の必要性が叫ばれるまでに起こった出来事について、記載していきます。
そもそもBCP対策が出てきたのは、2001年の米国同時多発テロの発生後と言われています。この時に、欧米の大企業を中心にBCP対策を講じる企業が増え始めました。
「9・11」 は、4機の民間航空機がテロリストにハイジャックされ、NY・マンハッタンの世界貿易センタービル (WTC) の北タワーと南タワーに突入した事件です。
この米国同時多発テロの際、メリルリンチ証券の事例では、1機目の航空機が北タワーに突っ込んだ7分後に災害対策本部が立ち上がり、約20分後には9000人の従業員をビルから避難させることに成功しています。
さらに、コンファレンスコールという他の支店と常時接続した回線をつなぎ、業務連絡も通常通り厳密に行うことができました。翌日にはCEO名義で 「当社は問題なく業務を行っている」 というメッセージを顧客宛に配信し、クライアントへのフォローも入れました。メリルリンチは、予めBCP対策をしていたことから、このような事業継続に対するアプローチを取ることが出来たと言われており、多くの企業がBCP対策を講じるきっかけを作ったと言われています。

さらに、記憶に新しい2011年の東日本大震災が発生することにより日本国内のBCP対策への関心は非常に高まりました。東日本大震災では多くの企業がその被害により影響を受けたと言われています。
具体的に企業が受けた被害として、売上等の営業状況の悪化、原材料・資材等の調達の滞りなどの問題が発生しました。この東日本大震災における倒産件数は、全国で1769件に上ります。このことは、企業が最悪の事態を想定し、予算の範囲内で可能な限りのBCP対策をとることを検討する機会になったと言われています。

BCP対策とは

BCP対策とは、企業におけるリスクマネジメントの一種で、地震・台風・大雨などの自然災害やテロ・事故・不祥事といった人的災害が発生した際、事業に関わる被害を最小限にとどめ、迅速な復旧と事業存続を可能にする体制を整備することを指します。その内容は緊急時の指揮命令系統整備、バックアップシステム、代替要員の確保、迅速な安否確認のフロー、マニュアルの整備と、様々な視点で検討する必要があります。

BCP対策を行うメリット

緊急事態に迅速に対応可能になる

BCP対策を事前に定めておくことで、災害やテロの時に、早急な事業復旧をすることが可能になります。早急に事業復旧することは、経営面での被害を最小限に抑えることにもつながります。

自社にとって優先度の高い事業が明確になる

企業でBCPを策定するためには、事業の優先度を吟味する必要があります。どの業務を優先して行うか、優先して行うべき中核事業を明確化することで、経営戦略立案や見直しにも役立てられます。

クライアントの信頼度の向上につながる

緊急時に、迅速な事業復旧を行い、クライアントと緊密に連絡をとることにより、クライアントの信頼を得ることができます。特に、東日本大震災でも大きな問題となりましたが、サプライチェーンが滞るとクライアントにも多大な影響を及ぼします。さらに、これからは、BCP対策を講じている企業であることは、クライアントが自社を取引先として選ぶための基準にもなることでしょう。

企業においてBCP対策が必要とされる理由

緊急時の被害の影響が計り知れないため

自然災害が起こった際に、サーバーダウンにより業務を行うことが出来なくなったり、インフラの破壊により、通勤や物流などに影響を与え、業務が滞る可能性があります。
また、一番多いケースですが、直接的被害は受けなくても、取引先が被災していたり、新型コロナの場合は世間の自粛ムードの煽りなどを受けて、事業継続が困難になるという事態も発生しました。
これらのことは全て、企業において大きな損失となります。今後も首都直下型地震や南海トラフ地震などの発生が高い確率で起こるとされており、万が一の場合に備えて、BCP対策を策定することは企業の事業を継続し、社会への影響を最小限に抑えるためにも必要となってきます。

IT化の急速な発展に伴うネットワーク障害に対応するため

高度情報化社会となっている現在、企業の業務にITシステムやネットワークは欠かせません。したがって、このシステムやネットワークがストップしてしまうと、メールでのやりとりや、受発注システムが使えなくなるなど、事業継続に多大なる影響を及ぼします。さらに、現代社会では、不正アクセスなどによるシステム障害やサーバ攻撃などのセキュリティリスクに対する企業の対策は、顧客のデータや機密情報を守るためにも必要とされています。こうしたネットワーク障害などにも備えて、日頃から対策しておくことは、災害やテロの際も迅速に事業復旧を可能にすることにつながります。

まとめ

以上、企業におけるBCP対策の必要性について説明していきました。

近年、これまでに経験したことがないような大規模な災害が後を絶ちません。したがって、このような中でも、企業は事業を継続させることが求められます。
そこで注目されるようになったのがBCP対策です。BCP対策を行うことで、万が一の場合でも、スムーズに必要最低限の業務を行うことが可能になり、迅速な事業復旧にもつながります。

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